23:10

筒井淳也『親密性の社会学』がとても興味深い内容で、近ごろよく読み返してる。この本では親密な関係、特に恋愛や結婚という人間関係には大きく3つの問題「選択の問題」「継続の問題」「ホールドアップ問題」が発生し、人はそれらの問題を「恋愛規範」と「純粋関係」の2つの原理で解決してるという。

親密性の社会学―縮小する家族のゆくえ (SEKAISHISO SEMINAR)

親密性の社会学―縮小する家族のゆくえ (SEKAISHISO SEMINAR)

23:11

恋愛規範は、「好きだから好き」という根源のない再帰的な感情のループをまわすことで「この人は運命の相手」というような気持ちを強化し、相手の容姿や性格、相性、関係から得られる満足さえも度外視することで、相手を唯一無二で交換不可能な存在として他の誰かと比較することの意味をなくす。

23:18

純粋関係とは、「相手の経済状況や社会的地位などから得られる利益ではなく、関係それ自体がもたらす実質的で情緒的な満足によってのみ成立・継続する関係」のことで、関係から得られる満足がなくなったら関係は終わる。

23:32

選択の問題とは、「この人とつきあうのは、別の誰かとつきあうよりも本当に幸せなのか?」というような問題のこと。親密な関係において複数の相手を比較することは非常に難しくてコストがかかるが、恋愛規範を適用して比較する意味をなくせば解決できる。

23:34

継続の問題とは、「このまま関係を長く続ければ相互理解が深まり長期的には高い満足が得られるが、そのためには一時的に表れる不満を乗り越えて関係を継続させなければならない」という問題のことで、結婚において典型的に表れる。これも恋愛規範によって解決できるが、別の問題が発生する。

23:40

ホールドアップ問題は、「最初は私に対してすごく気を使ってくれたのに、つきあいが長くなるといい加減な対応ばかりになってもうイヤ。でも別れられない」みたいな問題。関係が破綻してるのに、今の関係を終わらせて別の人と新しく関係を築くためのコストが大きいと考え、つい今の関係を続けてしまう。

23:47

恋愛規範を重視すると、選択の問題と継続の問題を軽減できる。恋愛規範は「好きだから好き」という根源のない再帰的な感情のループによって成立し、関係から得られる満足を度外視するためだ。しかしそれは長期的には関係が破綻する確率を高めるため、恋愛規範はホールドアップ問題を悪化させる。

23:51

純粋関係を重視する場合、関係から得られる満足を重視して「相性の合う人を見つける」ことが重視されるため、選択の問題を悪化させる。また継続の問題も解決できない。しかし真に相性のいい相手と関係が築ければ、将来的に関係が破綻する確率は減少し、ホールドアップ問題を軽減できる。

23:55

近ごろある友人から恋人への不満をよく相談されるんだけど、これは強力な恋愛規範によるホールドアップ問題の悪化だろうなーなどと実感。あと、僕自身は親密な関係において純粋関係の原理を重視する傾向が年々強くなってるような。そのせいか恋愛感情ていうのに近ごろまったく縁がないなー。

23:58

恋愛規範より純粋関係を重視するほうが、みんな幸せになれると僕は思う。選択の問題と継続の問題は、「結婚情報サービスなどによる出会いの市場化」「排他的で一対一の恋愛ではなく、同時並行で多対多の恋愛を許容する」などで軽減できると思うんだけど、これって恋愛規範的には絶対ナシなのが困る。